平たく解説・公務員心理 「不祥事への対応」その3
[今回の心理場面]
役人A:制度の不備による裏金作りが行われることもあるし、そこへ個人的な裏金作りを紛れさせてしまおうか?
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「過剰な原因療法」を追求する意識について、行政組織の不祥事の代表的なものである、裏金が作られる構造に即して述べてみたいと思います。
裏金は、税を納めた市民、国民の信頼を裏切るものであり、少しでも裏金を作らないように考えることは社会的にも重要です。ただ、そこでもひたすら監視を強めるような、過剰に原因療法を追求するようなことはせず、対症療法と原因療法を適切に使い分けることが重要ではないかと考えられるのです。
まず、そもそも裏金を作ろうとする心理を考えてみると、大まかには以下の3つに分類できると言えそうです。
(1)予算を年度内に執行するため
(2)不足する予算の費目へ流用するため
(3)レクリエーション費用の捻出、あるいは私的流用のため
(1)の心理については、予算の繰越が難しいことを原因としています。表面上で予算を使い切ったことにするために、虚偽の事実によって組織から予算を支出させ、やり取りされる現金を裏金としてプールしておくわけです。
(2)の心理も似た理屈となり、予算が物品費、旅費などの費目ごとで厳密に分けて配分されている場合、ある費目分を使い切った場合に他の費目からの流用が認められないことを原因としています。
例えば、旅費がまだ必要である場合に、旅費分の予算を使い切っていて物品費分の予算は余っているという状況で、物品費分の予算を裏金にして旅費に充てようとする、という具合に操作が行われるわけです。
(1)と(2)の心理は以上のような会計制度の不備を原因としているため、ここでは組織への原因療法を追求し、こうした制度の不備の改善を目指すようにすることが望ましいところでしょう。
ただ、(3)の心理については、この心理に基づいて裏金を作ることは全く個人の問題となるので、組織への原因療法を追求するのではなく、個人への対症療法によって厳しく防止されるべきと言えそうですね。
このように、一口に裏金への再発防止策といっても、その性質によって原因療法、対症療法を使い分けて対策を考えていくべきであることがわかるかと思います。
もし(3)の心理による裏金の発生に対してまで原因療法で解決しようとすると、構成員による会計手続の一挙手一投足を監視するようなことになるわけです。こうなると組織の機動性が奪われることとなるために、個人を罰する対症療法に任せるのが望ましいということなのです。
「不祥事への対応」の項は以上となります。次回からは「利害関係者」について述べていきたいと思います。
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