「給与を削減するといい人材が集まらなくなる」って乱暴な話じゃないか
大ざっぱではあるが、タイトルの件について雑感を述べてみたい。
様々な組織において、経営者が従業員の給与を削減するという流れが生まれることはあると思う。特に行政組織に対しては、民間水準に比べて給与が高い、削減せよ、ということがよく言われる。そしてその反論として、「給与を削減するといい人材が集まらなくなりますよ」という理屈が用いられる。
…正直、身も蓋もない理屈だとは思う。が、ここへさらなる反論をするのは難しいようにも感じる。たしかに給料を減らされたら、その仕事に就く人が減ってしまうよね…とすんなり納得してしまう。
ただこの理屈には、1円たりとも給与を下げさせないという乱暴な感情が込められている感があるのは確かだ。なので、あくまで身も蓋もないように感じる、その感覚へ主眼を置いて考えてみたい。
やはり、給与を削減すると一口に言っても、本当に人材が集まらなくなったり人材が逃げてしまうような水準と、それくらいでは人材が減ったり逃げたりはしない水準という、2つの水準があるのだと思う。そこで2つの水準を区別せずに、少しでも給与を削減すると前者の事態に陥りますよ、と一律に語ることには、脅しをかけるような意図があるのだろう。その部分で身も蓋もないように感じられるのだと。
となると、給与の削減でいい人材が集まらなくなる、この理屈は必ずしも正しいものではない。ある程度の給与の削減では人材が減ったり逃げたりすることはないわけで、その削減幅までは給与を減らすことはできるはずだと、そうした反論をすることができる。
ただ難しいのが、「ある程度の」給与の削減という、その一線がどこにあるのかがわからないことだ。これを明らかにするには、壮大な社会実験が必要になるだろう。
ここまで給与を下げても人材が減ったり逃げられたりはしない、これ以上給与を下げると人材が集まらなくなったり逃げられたりする、社会実験が実現すればその一線の目安をつけることができる。しかし現状ではそのような社会実験は見当たらないため、そこに根拠を求めて冒頭の理屈へ反論するのは難しそうだ。
しかし少なくとも、給与の削減でいい人材が集まらなくなるという理屈は、先に述べた「一線」を考慮していない乱暴なものであることは明らかであって、そのことを指摘すればよいのかと思う。
給与削減・退職金削減に備えた公務員のためのお金の貯め方・守り方
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