平たく解説・公務員心理 「キャリア制度」その4
[今回の心理場面]
キャリアA:頻繁な異動により専門知識がないし、この政策立案はどう行えばいいんだろう? とりあえず議員などの言うことをそのまま聞いておけばいいか…
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キャリア制度により生じる具体的な弊害について、続けて述べていきたいと思います。
3.専門知識の不足による弊害
キャリアの全体が幹部候補として扱われ、ゼネラリストの数が過剰になると、多くの人が頻繁な異動を行うことになります。
これによって、責任逃れだけではなく、専門知識を身につけられなくなるということも生じると考えられます。
専門知識が不足することが生み出すさらなる弊害について、しばしば指摘されるものを以下において挙げてみたいと思います。
(1)政策立案の消極性
まずは、ゼネラリストとして扱われて専門知識を得られない習慣があると、政策立案に際して専門的な見地から立ち入った話をすることが難しくなる、という弊害があります。
中央省庁の担当者が政策立案を行うにあたっては、国民全体の要請が高まっているような政策であれば問題なく立案に取り組めるものでしょう。
ただ、国民全体の要請が行われているかどうか明確でないものについては、議員や業界団体など、利害関係者からの要望を受けて、政策立案の必要性を検討することになります。
その場合、担当者が専門知識を有していれば、専門的な見地でもって政策立案の必要性を検討する、ということが期待できます。
そして、政策立案が不要と判断できれば、その旨を\毅然と利害関係者に対して説明し、\また政策立案が必要と判断できれば、ゼロベースで政策案を検討していくことができるわけですね。
こうした検討ができれば、より既得権益に切り込んで改革を行っていくことも期待できそうです。
しかし担当者の専門知識が不足していると、政策立案の必要性を正確に検討することが難しくなってしまいます。
そのような中ではさらに、「増加する予算、過剰な省益追求」の項でも述べたような、議員や業界団体に対していい顔をしようとする心理が先立つことにもなるわけです。
このような、議員や業界団体へいい顔をする姿勢の中で行われた政策立案は、およそのところ質の低い政策となってしまうものでしょう。
専門知識の不足による弊害は、次回に分けて述べていきたいと思います。