平たく解説・公務員心理 「公務員の異動」その5
[今回の心理場面]
部下A:これだけの引継書を作ったので、異動時の承認をお願いします。
上司B:これで承認します。 / これでは承認できないので、異動日までに(異動後になっても)修正して承認を取ってください。
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異動する際に引継書を整備させるにあたっては、その質を承認する手続を入れることが重要となります。今回は、引継書の質の承認について考えられる運用方法について述べたいと思います。
引継書の質を確認して承認するにあたって、それは身近な人間でないと判断できないと思われるため、上司が行うこととなるでしょう。そして1人の判断では主観が入るため、2人以上で評価することも必要でしょう。さらに、上司の判断に納得がいかない場合の裁定窓口を、人事担当の部署に用意しておくことも求められるところですね。
内容については、前任者の残した内容をベースとするのが望ましいと考えられます。
ただ、こうなると前任者の内容をそのまま流用できてしまいそうです。そのため、前任者の内容に対して、自分が新たに記載する内容を区別できることが重要となりますね。
新たに記載する内容は赤字で追記していき、上司の評価の際はその赤字の内容を説明していくような運用が考えられるでしょう。
そのようにしていけば、担当者の間で代々伝わるような引継書を作成できることになり、業務の効率が改善することを見込めるのではないでしょうか?
担当者が抱える大きな課題についても、あまり先送りの姿勢を取らせないよう、ある程度は解決していないと異動は認められないようにすることも重要でしょう。もちろん大きな課題を全て解決させていくことを求めるのは無理があるので、残った課題は引継書に記載して後任へ引き継ぐ形を柔軟に認めることも必要となりそうです。
上司の評価が万能ではないこと、正規職員以外の職員には引継書の整備を強制できないことなどを考えると、この方法で理想的な異動体制を取れるわけではありません。
しかし少なくとも、正規職員の業務への責任感をそれなりに引き締めることが期待できるわけであり、こうした運用を行っていくことが望まれるところです。
「公務員の異動」の項は以上となります。次回からは「不祥事への対応」について述べていきたいと思います。
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