マミートラックからのゆるやかな復旧
前回書いた内容の補足にもなるが、マミートラック、パピートラックにおける問題点を整理してみたい。
最近目にしたところで、「産休育休で長期間仕事をしていなかった上に、復帰後も子供に手がかかるのに元のポジションに戻りたいなんてわがままだ」という意見があったのだが、これには一理あるように思えた。
ただこの理屈はシンプルなようで、細かく論点を整理しておかなければ意味合いがずいぶん変わってくる。
この理屈が濫用されると、産休育休のブランクや復帰後の子供の手間を考えると、女性は出産と同時に仕事を辞めるべき、という前時代的で乱暴な話になる。
ポイントとしては、復帰しても構わないがいつ元のポジションに戻れるか、キャリアを再開できるか、というタイミングのところにあるだろう。
このタイミングが復帰後、「直ちに」元のポジションに戻りたいというのでは、たしかにわがままなように思われる。子供の手間がかかり、毎日定時で帰宅したり子供が病気をしては早退して看護休暇を取るという状態では、単身の状態でこなしていたポジションに戻るというのは、たしかに非現実的だろう。
ただ、だからといって復帰後は一切元のポジションに戻れることはなく、キャリアは再開できない…となると、これもまた暴論になる。子供の手間がかかることで仕事上で役立たずの烙印を押され、キャリアを絶たれるというのでは厳しすぎる。
もちろん、ずっと家事育児を優先していたいのでキャリアはもう再開しなくてよい、という女性も多いわけであるが、再開できるならそうしたいという女性も一定数いるわけで、子供の手間が一段落した状態であれば、その希望は叶えられてしかるべきだろう。ここが落としどころになるのだと思う。
子供が小さいうちは育児に集中する人はキャリアを抑えた状態で保護を受け、育児が一段落すれば本人の希望次第でキャリアを速やかに再開できる。前回述べたパピートラックも同じことが言えるのだが、このように一度キャリアを下りた上でゆるやかに復旧していく、そんな枠組みが最も適切なものとして、広く理解が浸透していくことを期待するところである。