社会的な心理考察記

社会に働く心理について考察したブログです。

「お客様は神様です」は全くもって誤った使い方がされている

 日本では、「お客様は神様です」という言葉がよく使われる。商売をする者にとって、お金を払ってくれる客は神様のようなものという意味合いであるとして、一般的な理解が定着しているだろう。しかしこの使い方、日野瑛太郎氏の書籍で取り上げられていたが、全く誤ったものなのだ。

 

 この言葉は、お客様は神様だから店側は何でも言うことを聞け、と客側が横暴を振りかざすことにつながりやすいものだが、これが決定的に誤っているのである。

 どうやら、舞台で演じる者はお客さんが神様だと思って真摯に演じよ、というものであるらしく、一般の店においてまで客が神様になるなんてことを全く想定していないのだ。あくまで「舞台で演じる者」に限った話なのである。一般の店で働く人に対してまでこの理屈を用いるのは、ただの濫用でしかないのだ。

 

 確かに、一芸を披露してそこで客側からお金を払ってもらうという立場であれば、それは客を神様と思うくらいの真摯さが求められるだろう。しかし一般の店は、商品やサービスを提供すれば、お金を払ってもらう客に対しての義理は尽くされているのだ。

 もちろん、最低限の義理を尽くすだけでは味気がないので、店側が自発的にそれ以上のサービスを行うということはあるだろう。しかしそれはあくまで自発的なものであって、客側が横暴にもそれを求めるということはあってはならないのだ。

 

 以前に日本人の対応圧力の強さについて書いたが、「お客様は神様です」という言葉が生まれたときに、それを対応圧力の道具としてこぞって利用しようとしたわけで、そんな日本人の心理がただ残念なものに映る。

 

「お客様」がやかましい (ちくまプリマー新書)

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