社会を変化させる社会心理論・組織心理論の考察記

行政職員の筆者による、社会を変化させるような社会心理論、組織心理論がいかなるものか、その考察内容を綴ったブログです。

有給休暇の買い取り制度には危険がつきまとう

 この話は、日本において有給休暇の取得率が低い現状において、しばしば提案されている。有給休暇に係るアンケートが実施される段においては、対策案において上位にランクインされていることも多い考え方だ。しかし、脱社畜ブログでも取り上げられていたが、個人的にはこの制度は危険であるように思う。

 というのも、有給休暇を買い取ってもらうことで基準以上の給与を得られるならば、労働者はそれを基準に考えてしまうことが考えられるのだ。やはり、最大で得られる給与というものがあるならば、それを基準にしたくなるというのが人間心理だろう。

 

 基準以上に得られる給与と言えば、現状でも残業代がこれに該当する。自分の周りでも、自身の給与について残業代を前提にした額を話にする人は多い。本当に基本給から高給取りなのかもしれないが、およそ給与自慢をしてくる人は、残業代を込みにした額を言っていることが多い。

 自分としては、残業代はイレギュラーなものであって、これを前提にするのは適切なものでないと思っている。だいたい、残業代はワークシェアリングの概念に反していて、1人が基本給と残業代をせしめるのではなく、もう1人雇用を増やして2人で分け合うのが適切だというのはよく言われる話だ。

 

 少し話が逸れたが、残業代ですらそれを前提にした給与の計算がなされやすいのだから、有給休暇の買い取り制度があれば、なおのことそれを前提に給与の計算がなされることが見込まれるのだ。給与自慢をする日には必須のものとなる。

 そう考えると、有給休暇の買い取りの制度があるというのは、有給休暇の取得率を絶望的に押し下げる結果になるだろうという想像がつく。有給休暇は取れないものと諦めた上での制度設計なのだから、それは根本が誤っているのだ。

 

 さらには、より悲惨な事態も想定される。有給休暇の買い取りで現在の水準より高い給与を得られればいいのだが、その状況はいつまでも続くとは思えないのである。これも脱社畜ブログで述べられているのだが、いつかは使用者側が労働者の賃金を、有給休暇の買い取りコストも含めて設定しようとすることが想像されるのだ。単純に給与が圧縮されるわけで、有給休暇を全て買い取ってもらって始めて、以前の水準の給与が得られるということにもなる。なんともおぞましい話だ。

 

 有給休暇の買い取りにはこのような、労働基準法の概念を覆しかねない危険が秘められているわけで、その認識が広まっていってほしいと思う。アンケートでこの制度への要望が上位に来るということは、ゆゆしき事態なのだ。

 

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