平たく解説・公務員心理 「キャリア制度」その6
[今回の心理場面]
キャリア部下A:また専門知識のない幹部がやってきた…レクチャーに時間を取られ過ぎるから嫌なんだよ。。
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キャリア制度で生じる専門知識の不足による弊害として、幹部へのレクチャーについて述べていきたいと思います。
(3)幹部へのレクチャー
中央省庁では、その頻繁な異動を繰り返す文化が高じてのことか、ある業務について門外の人までが、当該業務の幹部として就任してくることがあると言われています。
そして、門外であるために専門性のない幹部に対して、若手、中堅が幹部の勉強のための資料を作成したり、幹部にレクチャーを行うことなどに多くの労力を割くことになっている、という弊害がしばしば指摘されています。
幹部のことは特権階級と認識されやすいため、若手、中堅にとっては、念のための意識とも相まって、幹部に対して非常に細かいレクチャーを行うことが求められるわけですね。
若手、中堅にとっては、自身も頻繁な異動をする必要がある上に、幹部のレクチャーまで行う必要があるとなると、ますます専門性を身につける時間が奪われてしまうことになりそうです。
ここで、若手、中堅が幹部へのレクチャーで苦しんでいる状態に関して、「君子は下問を恥じず」という格言を用いて考えてみたいと思います。
大人になればなるほど、周りからの評判といったメンツを気にするようになってしまうため、わからないことがあってもそれを恥じてしまい、人に聞きにくくなることがあるでしょう。しかしあえてそのような感情を克服して、わからないものはわからないと素直に割り切って、人に聞くことをこの格言は推奨しています。
ただこの格言は、年齢、役職が高じており豊富な知識を有しているけども、ある知識だけはスポット的に触れ合う機会がなかった、という人が素直に下の者に聞くという状況に当てはまるものではないでしょうか?
年齢、役職が高じているけれども、当該業務についてスポット的でなく全般的に知識が欠落している人が、何でも下の者に教えを請えばいいという意識を持つことを、おそらくこの格言は指していないように思えます。
そして幹部へのレクチャーは、後者のような意識で行われているものなのでしょう。となると、この格言の指す内容に当てはまらないわけです。
このような格言の当てはまらないレクチャーが行われるのも、頻繁な移動の文化によって、幹部でさえも門外の部署に配属されてしまう、という状況から来る弊害と言えそうです。
弊害例は以上となり、次回は、キャリア制度への改善案について述べていきたいと思います。