平たく解説・公務員心理 「増加する予算、過剰な省益追求」その12
[今回の心理場面]
省庁A:内閣にも、他の省庁と共同で政策へ取り組めるような枠組が、少しはあってもいいのかもしれない。
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過剰な省益追求への改善案の外的なものについて、「内閣横断組織」という概念について続けて述べていきたいと思います。
7.内閣横断組織の設計、柔軟な省庁再編
「割り振り争い」や「縦割り」の項においては、各部署の調整を図る横断組織について紹介しています。この概念を霞が関にも導入すると、「内閣横断組織」として設置するという案が浮かびます。
そしてこの組織によって、過剰な省益追求に対して調整を行っていくことも、改善案として考えられます。
またその調整に関して、各省庁へ調整を行った事例を積み上げて、その内容に応じて省庁再編を柔軟に行えるようにする、という運用にすることも考えられます。
しかし、中央省庁全体に対する内閣横断組織となると、その規模はどれほどのものになるでしょうか?
容易には想像できませんが、霞が関の全体へ実務的な部分にまで踏み込むとなると、非常に大がかりな組織となるでしょう。
そのような大がかりな組織であることで、その組織設計を行う手続量が膨大になる、また組織を柔軟に機能させることが難しくなる恐れがある、といった懸念が避けがたく存在します。
また、内閣横断組織により柔軟な省庁再編を行うとしても、大がかりな省庁再編を行うには、手続量が膨大なものとなることも想定されます。
そのため、過剰な省益追求への改善案としては内閣横断組織の設計よりも、ここまで述べてきた天下り文化の改善、各省庁個別の人事の見直し、人事評価基準の明文化などを中心とするほうが有効であると言えるでしょう。
内閣横断組織の設計という線に従って検討を行うとすれば、横断組織の管轄範囲を狭めて、内閣全体ではなく部分的なものとすること、といった方策を探ることが有効であると考えられます。
実際に、外交・安全保障に範囲を絞って各省の横断組織としての役割を果たす、日本版NSC(国家安全保障会議)の運用が行われています。
内閣横断組織の考え方としては、こうした組織の在り方を考慮しながら検討していくことが有効と言えそうです。
「増加する予算、過剰な省益追求」の項は以上となります。次回からは「天下り」について述べたいと思います。
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