平たく解説・公務員心理 「公務員の異動」その4
[今回の心理場面]
前任A:異動してこの部署を去れるのが嬉しい。引継書は適当に作っておけばいいだろう。
後任B:なんで引継書がこんなに適当なんだ? 残せる知識はしっかり残しておいてくれよ…。
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行政組織での短期間の異動に関しては、ここまで述べた弊害のことを考えて、単純に制度を改めるべきということになるかと思います。
短期間の異動の制度は、行政組織の全体として「ゼネラリスト」というものに強い憧れを持ってしまっているのが原因と考えられ、「スペシャリスト」を地道に育成することも組織においては重要である、と認識することが必要でしょう。
ただ、こう一口に言っても実現性に乏しいのも確かです。少しでも実現性を持たせるため、その足掛かりになると筆者が考える「引継書の整備」について、以下述べたいと思います。
引継書は、業務の前任者から後任者へ仕事の仕方を伝えるものです。引継書を整備することは、前任者が自身の行ってきた業務の知識を記すもので、責任を形にするものとは言えないでしょうか?
短期間の異動の文化を改善していくにも、まずその問題点となっている専門知識の不足、責任逃れの意識を改善していくにあたって、異動時の引継書の整備が有効だと考えられるのです。
行政組織においては、専門知識の不足、責任逃れの意識が充満しているためか、引継書についても軽視されがちである、というのが正直なところです。
構成員の異動期に引継書を作成させる体制が徹底されておらず、異動のたびに構成員が0から業務を覚えていかなければならないという事態につながっているわけです。もちろん、こうしたことは望ましいことではありませんよね。
ここへ引継書の整備を徹底させて、引継書を適切に残すまでは異動を完了できない、という運用にするわけです。異動日までに引継書を完成できず次の部署へ移ったとしても、引き続きの宿題が残るということですね。
このような運用にできれば、専門知識の不足や責任逃れの意識を引き締められるものと期待するのですが、皆さんの考えはいかがでしょうか?
引継書の整備には、十分な内容を作成できているかを確認する必要もあります。次回はこの点について述べていきます。