平たく解説・公務員心理 「自己意義の増殖」その1
[今回の心理場面]
部署A:仕事が減ってきたな…部署のポストを減らされたくないし、つまらない仕事も業務のうちにしてしまおう。
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行政組織というものには、課題を達成して社会が安定していくたびに、業務量が減っていくというジレンマが存在しています。
民間企業がある課題を達成すれば、利潤のため次の新しい課題を考えていくものとは異なる部分ですね。
このことについて、市民の感覚では、行政課題が達成されて社会が安定するのだから、業務量が減ってもそれでいいじゃないか、と思うところでしょう。普通はそうなのです。
しかしこの状況について、行政組織にはその普通が通らない現実があります。
「縦割り」の項でも述べた心理にも通じるのですが、とにかく行政組織は業務量の減少について、人員ポストの減少に連動することを考えるわけです。
そして、その結果としてか、業務量の減少に対抗して無駄な業務を探し出すことで、人員ポストの減少を阻止しようとする意識が存在しているのですね。
この無駄な業務を探し出すことを、「自己意義の増殖」という言葉で提起したいと思います。
組織心理としては、現状の課題を達成して安定を迎えたときに、その後の新たな課題が出てきたときに備えて人員、部署を確保しておきたい、という心理はあるでしょう。これは当然のことです。
ただ…行政組織においては、「公務員は安定している」と言われるとおり、これを体現するため、構成員の人事処遇の安定を強く求めるわけですね。
そのために、人員のポストを確保しようとする意識が強固であり、この自己意義の増殖を行う意識が強いように見受けられるのです。
この自己意義の増殖の意識によっても、行政組織では先に述べてきた念のための意識、過剰な信憑性の追求の意識に従った、煩雑さの過ぎる、意義の感じられない業務を行ったりするのでしょう。あるいは、あまり意味のない評価の作業を繰り返すことなどもあるわけです。
また、各省庁における特別会計や、各省庁が設置する外郭団体などについては、その役割を終えたと言える状況になっても、何かと理由をつけて存続させようとするということがよく言われます。これこそまさに、自己意義の増殖の意識による極めつけの事態なのではないかと思うのです。
人員のポスト、さらには幹部の天下り先ポストをあくまで確保したい心理の表れであり、こうした予算や組織を無理に存続させることは、大変な予算の無駄遣いにつながってしまうわけです。
次回は、この自己意義の増殖の心理を的確に言い当てているものとして、「パーキンソンの法則」を取り上げてみたいと思います。