平たく解説・公務員心理 「割り振り争い」その7
[今回の心理場面]
部署A:割り振り争いは、仮にでも受けたらそのまま担当にされていまいそうで嫌なんだよ…。
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ここまで、割り振り争いの生じる業務へは、両部署間で協力的に持回ること、第三者の部署も交えて割り振りを決断すること、の2点が求められることを述べてきました。
今回は、割り振りについて適切に議論へ乗せるために必要な、「仮に受ける」という心構えについて述べたいと思います。この点には、「善意の義務化」という概念が絡んでくるものと考えられます。
市役所の窓口対応などにおいて、線引きがあいまいな業務の割り振りを速やかに決める必要があるケースについて考えます。この場合でも、割り振り争いの意識が生じると、一度受けると自分の割り振りとして固定されてしまうことを恐れ、速やかに決める必要があるにも関わらずなかなか決められない、ということになるわけです。
この場合、一度受けることに関して「善意の義務化」という考え方が絡んでいるのではないかと考えられるのです。
善意の義務化というと、「善意で行うはずのことを義務として置き換えること」を指すものと捉えられます。サービス残業がこの典型であり、組織によっては、本来は全くの善意で行うはずのものを、義務であるかのように考えられることがありますよね。
そして、この「善意で行うはずのことを義務として置き換えること」というのが、割り振り争いをしている部署の間で生じやすいものなのです。自分が善意で仕事を受けたら、そのまま自分の義務と置き換えられてしまい、自分の割り振りとして固定されてしまう、というように恐れるわけですね。
自分が善意を持って仕事を受けようとしても、それに対して相手がつけ上がるだけなのであれば、善意を示すことに抵抗を覚えてしまいます。
そして「一度たりとも受けたくない」と思うことで、割り振り争いの議論にすら入れなくなることになってしまうわけですね。
こうした心理に対しては、割り振りを「仮に受ける」という方法を認めることが重要なのではないでしょうか?
善意により仮に受けることができれば、仮に受けた後に割り振りの議論へ移行することができるため、善意を示すことがまだ容易になると期待できるのです。行政組織には、こうした考えが浸透していくことが望まれるところです。
「割り振り争い」の項は以上となります。次回からは「縦割り」について述べていきたいと思います。
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