社会を変化させる社会心理論・組織心理論の考察記

行政職員の筆者による、社会を変化させるような社会心理論、組織心理論がいかなるものか、その考察内容を綴ったブログです。

平たく解説・公務員心理 「念のため」その8

 [今回の心理場面]
 部署A:とにかくこうしたリスクは避ける方向でいきましょう。
 役人B:(リスクを実物以上に捉えて恐がってないか…?)

 

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 念のための意識、過剰な信憑性を追求する意識ですが、改善案としては、とにもかくにも構成員個々の意識を改めるほかはないのかと思われます。
 そうした意識に従って仕事をしていると、とにかく不必要に業務時間を長くしてしまい、非生産的な状態に陥ってしまうと、啓発を続ける必要があるわけです。

 

 その啓発に役立つ概念として、著者が考えるものが3つあるのですが、以下追って述べてさせてください。

 

1.コーシャス・シフト
 まず、社会心理学における「コーシャス・シフト」の概念を用いて述べたいと思います。

 

 人間行動においては、利益とリスクとの比較を行うことが基本的な行動原理と言えます。
 利益を選んでリスクを覚悟する、リスクを恐れて利益を諦める、といったことを、その利益とリスクの軽さ重さを見定めながら判断するものであり、これは組織においても同様の理屈となるでしょう。

 

 ただ、組織における行動を決定するにあたって、複数の人が意思決定に絡むことで利益評価、リスク評価が極端なものになりやすいと、社会心理学においては指摘されているそうです。
 さらに、この極端さというのは、個人の意思決定においては考えもつかないような程度のものとなることが言われています。
 社会心理学ではこの状況を集団分極化と言い、よりリスクを取ろうとするリスキー・シフト、よりリスクを避けようとするコーシャス・シフトに区分されます。

 

 そして行政組織においても、こうした極端さが生まれます。
 リスキー・シフトはどうでしょうか? 市民からの業務の当然視によって失敗を責められる恐れがあるため、これは普通は生じませんね。


 逆にコーシャス・シフトはというと、こちらは大変な頻度で生じます。
 行政組織の念のための意識が、このコーシャス・シフトとまさに結びつくというわけです。

 

 また、集団分極化による意思決定であるために、個人としては考えもしないような程度で、リスク回避を要求されるということにもなります。個々の構成員が疑問を感じながらこのコーシャス・シフトを受け入れる、という構図もしばしば成り立つものでしょう。

 

 組織において、上司からリスクを重く見る考え方を指示されることがあるかと思います。これは上司が大人だからというよりは、上司が組織のコーシャス・シフトの意思を代弁している面が強い、と言えるのかもしれません。

 

 この概念から、集団においては個人で考える以上にリスクを恐れてしまうものであるため、集団として感じているリスクは実物より大きくなっており、それは割り引いて考えないといけないということが導けるのではないでしょうか。
 組織での過剰なリスク回避の姿勢を感じたら、それを割り引いて考えて、「恐がり過ぎだ」と跳ね除ける意識を持つことが望まれるところですね。

 
 次回も続けて、念のための意識、過剰な信憑性を追求する意識に対して、著者の考える改善案を述べていきたいと思います。

 

組織における意思決定の心理―組織の記述的意思決定論

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