平たく解説・公務員心理 「念のため」その6
[今回の心理場面]
役人A:旅費の計算なのだから、出張の行程から細かく算出しよう。にしても、細かく算出してるときりがないな…。
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「過剰な信憑性」を追求する心理の具体的な弊害のうち、過剰な信憑性の追求に限界があることをよく示す好例として、旅費の計算について述べてみたいと思います。
5.旅費の計算
組織において構成員が出張を行うにあたっては、出張に要する旅費を計算し、構成員に支給する必要があります。そしてこの計算方法においては、一般的には「定額支給」と「実費支給」の2つの方法が取られています。
しかしこの旅費の定額支給と実費支給をめぐっては、どちらを選ぶべきかのジレンマが生じやすいのです。そして行政組織では、信憑性を過剰に追求するため、このジレンマに時間を奪われすぎる、となるわけです。
まず、この定額支給と実費支給がどういうものか、見ていきましょう。
旅費は、出張内容によってそれぞれに出張先は変わってくるため、様々な経費が変動します。そしておよそのものとしては、交通費と宿泊費の二つが挙げられます。
交通費は、鉄道を使用するか航空機を使用するかで金額が変わり、また鉄道の場合は新幹線、特急などの料金が発生するかどうかも変わってきます。
宿泊費は、地域によって、あるいは宿の性質によって金額が変わります。
そしてこの交通費、宿泊費などに関して、実費支給は、出張に要した費用をそのままの金額で出張者へ支給するというものです。
ただ交通費などの様々な変化に対して、実費支給の形を取るとなると、どういうことが必要になるでしょうか?
それは、出張者にその都度の領収書を確保しておいてもらう、ということになります。
しかし、宿泊費の領収書の手配は難しくないかもしれませんが、交通費の領収書をその都度で確実に残しておくというのは、なかなか難しいのではないでしょうか?
そして、出張者にその都度の領収書を確保してもらうだけでも煩雑になるのですが、支給手続を行う側にも問題が生じます。各出張者から領収書を提出してもらって、支給額を厳密に計算する必要が出てくるわけですね。
一方、定額支給というものは、こうした実費計算の煩雑さをなくすものとなります。
その考えとしては、交通機関や宿泊先の一般的な金額を地域ごとに算出し、その額を定額として定めて出張者へ支給する、ということになります。
行政組織においても、実費支給の煩雑さを解消するために、定額支給の形を取ることが一般的になっていたりもします。
説明が長くなりますので、実費支給と定額支給の問題点については、次回へ続きます。