社会的な心理考察記

社会に働く心理について考察したブログです。

「言わなくてもわかるだろう」論

タイトル通り、対人心理にかかるこの言葉への考察を。

言わなくてもわかるだろう、という言葉は空気が読めない人を糾弾するときに使われるイメージが一般的となっている。「ここまで言えば、言ってないことは自分で補って行動できるだろう」と。

この表現に、数字を当てはめて言い換えてみると

「10のうち8を言ってるんだから、選択肢は1つに絞れるだろうし、あとの2は言わなくてもその選択肢を選べるだろう」

といったところに。これは確かにその通り。

ただ、この数字を変えてみたところでも、「言わなくてもわかるだろう」という心理は発生するような気がする。すなわち、 「10のうち5を言ってるんだから、選択肢は1つに絞れるだろうし、あとの5は言わなくてもその選択肢を選べるだろう」。

…? 10のうち5を言ったところで選択肢が1つに絞られる?

おそらくそんなことはなく、10のうち5を言われただけではまだ2,3つの選択肢が残るのではなかろうか。

そうした状況へ「言わなくてもわかるだろう」という理屈を使えば、2,3つの選択肢が残る状況でも、自分の意に沿う選択肢を選べ、という暴論が成立してしまう。 つまるところ、これはモラハラやパワハラでよくある状況に。

10のうち8を言っている、5を言っているという状況判断が個人の感覚によって変わってくるため、人によっては実際は5しか言ってないのに8を言っているつもりでいて、空気を読めない相手を糾弾するつもりがモラハラになっている、という事態に及びやすいもの。 そのあたりが難しいところなのだけども、ひとまずは反論する側の武器として、「言わなくてもわかるだろう」と言われた際の判断材料と選択肢を考えられる限り羅列し、

「まだ2,3つの選択肢が残っていたため判断できなかった」

というように主張する方向で考えていくのがよいと思われるところである。